「企業供述」 供述準備及び模擬尋問
供述者は企業側弁護人と以下のような内容について準備する。
まずは、段取りの説明。日時、場所、参加者とその役割(弁護人、通訳、速記者等)、相手側の素性などを説明する。ビデオ供述の場合には、表情やしぐさなど、外見的なことも詳しくアドバイスする。
次に、証言方法に関する基本的なアドバイスをする(正直に、憶測を言わないなど)。また、口頭異議の意味や目的などについても説明する。
そして、通知項目を逐次読み直し、供述者の知識を確認しながら、問題点や書類などをチェックする。
最後に模擬尋問を行い、相手側の高圧的な質疑等に対し、感情的になったり体勢を崩したりしないよう備える。
供述は「真実であり真実以外の何ものでもない」と宣誓することに始まり、宣誓してから供述が終わるまでの間、嘘をつけば偽証となり証人が罰せられたり、証言に矛盾点があれば弾劾される可能性がある。これを避けるため、充分な準備期間を取り模擬尋問をして本番に備える。
前述1で挙げた衝突事故の際、自動車のエアバッグが開かず怪我をしたBさんが自動車メーカーD社を訴えた例を再び見てみよう。D社の供述者が数年前に行なった別件の供述で、「当該車種を使ったエアバッグの実験はしていません。」と証言したにもかかわらず、今回の供述で「当該車種を使って実験しました。」と言ったとする。証言が変わったことに対し、Bさんの弁護人は、D社の供述の信憑性を問うため、後の裁判の際次のように弾劾する。「先程陪審員の前で、真実であり真実以外の何物でもないと宣誓したことを、もはやお忘れではありませんよね。もう一度確認しますが、エアバッグの実験はしていませんね。」もしここでD社証言者がこれを認めなければ、Bさんの弁護人は次のように反対尋問を行い、さらに証言の信憑性について追及する。
「2003年7月10日に、カリフォルニア州トーランス市マリオットホテル内会議室で供述したことを覚えていますね。今、私が手にしている紙は、その時の御社の証言記録です。もう一度ここで目を通しますか? その時も御社の証言者は今日と同じように、“真実であり真実以外の何物でもない”と宣誓しており、その時の証言は公式裁判速記者によって、全てここに記録されています。あなたは証言記録内容を訂正する機会があったにも関わらず、訂正しませんでしたね。このときの供述では、“当該車種を使ったエアバッグの実験はしていません。”と証言されています。しかし、これは先程おっしゃったことと矛盾しています。つまりあなたは嘘の証言をしたということです。」これに対し、被告側弁護人は反対尋問によって損なわれた証人の信頼を回復するため、反対尋問で取上げられた事項に関する再直接尋問を行う。